【ちょっとしたお話】 病気
「尿石症」は頻尿、血尿、排尿困難(尿が出にくい)などの症状を引き起こす病気です。
ひどい子になると完全尿閉(尿が全く出ない)となり、急いで入院や手術をする必要があります。
尿石の種類はいくつかありますが、多くの場合はストラバイト結石やシュウ酸カルシウム結石と診断され、治療後に再発を防ぐために食餌療法が必要となります。
治療・再発防止のためのご飯は結石の材料となるリンやマグネシウムなどの栄養素を制限してあります。
基本的には処方食のみを与え、確実に栄養素の制限が出来るようにしていただく事が理想です。
しかし、「どうしてもオヤツを欲しがって…」という方には、「マグネシウムが多いものは絶対に避けて下さい」とお伝えしています。
尿石症の子に与えてはいけないオヤツ
マグネシウムは 大豆製品、魚介類、海藻、木の実(これは他の理由からもワンちゃんには避けて頂きたいおやつです)に多く含まれています。
例) 海苔 ごま ワカメ きなこ 煮干し 納豆 豆腐 アサリ イクラ ほうれん草 切り干し大根
リンは 魚介類、乳製品に多く含まれています。
例) しらす 煮干し レバー チーズ 卵黄 ハム ササミ 海苔 そら豆 モロヘイヤ
!!!ポイント!!!!!
★ 上記にあげた食べ物以外でも多くの物にマグネシウムが含まれています。
あくまでも基本は処方食だけ!とお考えいただき、やむを得ず他の食べ物を与える場合はどのようなものでも少量のみを心掛けて下さい。
★ 処方食以外の物を与えることで栄養素の制限が弱まるため、悪化・再発のリスクが上がってしまいます。
処方食だけの子よりもさらに検診(尿検査)が重要になりますので、出来れば1~2か月ごとにしっかりと検査を受けてくださいね。
担当:獣医師 水出
シニア期のワンちゃん・ネコちゃんでご注意いただきたい病気の一つに甲状腺の機能異常があります。
甲状腺は様々な器官に働きかけて体を活発にするホルモンを分泌している器官で、機能異常が起こると次のような様々な症状がでてきます。
★ 甲状腺ホルモンが少なすぎる場合(甲状腺機能低下症) ★
ワンちゃんがなりやすいとされています。
シニア世代では「「年をとったから当然だよな」と思いがちな症状です。
・無気力、無感情な様子が以前より多くなってくる
・運動・散歩を以前より喜ばなくなる
・以前に比べて寒がりになり、暖かい所を好む
・毛が生え変わりにくい 抜けた後なかなか生えてこない
★ 甲状腺ホルモンが多すぎる場合(甲状腺機能亢進症) ★
ネコちゃんがなりやすいとされています。
シニア世代では「年の割にはいつまでも元気でいてくれてうれしい」と思いがちな症状ですが、
じつは体が強制的にフルマラソンを続けさせられているような状態である為、体の衰えをはやめてしまいます。
・活動的で活発に動く (イライラしたり怒りっぽくなったりもする)
・食欲が旺盛 水を沢山飲む
・毛並がパサつく 爪が良く伸びる
このように、シニア世代では「あっても当然」と思わせるような症状であり、ついつい見逃しやすい病気の一つだと言えるでしょう。
この病気はホルモンの量を正常に戻すことで、より快適な日常生活を長く送ってもらうことが可能です。
もし「うちの子、もしかして・・・」と思われるようでしたら、一度ご相談くださいね。
記事担当:獣医師 水出
今回は、「エキノコックス症」についてのお話です。
先日、愛知県阿久比町内の山で捕獲された野犬から、エキノコックスという寄生虫が検出されたとのニュースがありました。
エキノコックスとは、もともとは北海道のキタキツネにいる寄生虫の名前です。
キツネや犬は、エキノコックスに感染しているネズミを食べることによって感染しますが、キツネや犬にとってはほぼ無害の寄生虫です。
問題となるのは、人に感染してしまった場合です。
人の場合、エキノコックスに感染したキツネや犬の糞便に汚染されたものを偶然飲み込んでしまうことによって感染します。その多くは、野山に行ったときに、山菜や手指についた虫卵が口から侵入して感染してしまうケースが多いようです。
症状が現れるのは感染してから10年前後経ってからです。人の症状としては、疲労感・黄疸・右わき腹の痛みなどです。現状のところ、進行を抑制する薬はあるものの、完治には患部の切除の他なく、放置すれば死に至る、恐い病気です。
予防としては、
・野山から帰ったときはよく手を洗う
・衣服や靴についた泥はよく落とす
・沢や川の生水は飲まない
・山菜や野菜、果物などはよく洗ってから食べる
・犬を放し飼いにしない
などです。
こういった適切な予防ができれば人への感染は心配ないので、特に山に出かけられる機会がある方は、ご注意してくださいね(^^)
【エキノコックスの感染経路】
担当:獣医師 加藤
<喀血と吐血の違い>
言葉を話せない動物さんたちは自分で症状や痛みのある部分を伝えることができません。
そこで私たちはお家で見られた症状を飼い主様にお聞きして原因や問題のある臓器を
絞り込んでいきます。
今回は「血を吐いた時」にお聞きするポイントをご紹介します。
血にも吐血と喀血の2種類があり・・・
★喀血とは・・・
吐き出した血液は鮮紅色で血液に泡が混ざっていることがあります。
*喉頭から肺に至る気道のどこかで起こった出血が喀出されたもので、
血痰としてでることもあります。
<原因>
誤って異物を気道内に飲み込んでしまったり、交通事故や動物同士のケンカにより
肺の損傷によって気道内で出血した場合。
気管支や肺、心臓などの病気や腫瘍、血液の病気。
★吐血とは・・・
胃、十二指腸などから出血した場合、黒ずんだ色をしています。
(口の中、喉などの上部の消化器から出血した場合は黒ずんではいません。)
十二指腸より上部消化管で起こった出血が吐出(嘔吐とともに出る)されたものです。
<原因>
口の中、喉の出血、食道や胃の病気、腫瘍、血液の病気。
★主に上記の表の4つをポイントにして症状を絞り込んでいきます。
よろしければ診察時に吐いた物、便、尿や症状を写した動画などありましたら
より細かい事がわかるため、是非お持ちくださいね。
文責 看護士 横田
今回は、ワンちゃんのブドウ中毒についてのお話です。
近年ブドウや干しブドウは、ワンちゃんに急性腎不全をおこす可能性のある食材として注意が促されています。
はっきりとした原因はまだ分かっていませんが、実際にブドウを食べて急性腎不全をおこしてしまったワンちゃんのケースが、世界で何十例も報告されています。
症状としては、嘔吐・下痢・元気消失・乏尿(尿量が極端に少ない状態)などで、最終的に亡くなってしまうケースも報告されています。
中毒量の目安としては、ワンちゃんの体重1kgあたりブドウ20g以上、干しブドウの場合は11g以上と言われていますが、個体差やブドウの種類や状態によって差があると思われるので、ワンちゃんにブドウや干しブドウをあげるのは、少量であってもやめた方が良いでしょう。
猫ちゃんでのブドウ中毒の報告はまだありませんが、ワンちゃんと同じようにおこってしまう可能性はあると思われるため、やめておいた方が良いと思われます。
もしそれでもブドウを食べてしまった場合は、時間が経ってなければ吐かせる処置がお勧めです。
すぐにご連絡下さいね。
文責 獣医師:加藤
この腫瘍は脂肪細胞が腫瘍化したものです。
高齢の動物で多く発生が見られる良性の腫瘍ですが、非常によく似たものには悪性の腫瘍(脂肪肉腫、肥満細胞腫 ※)もあります。
症状:
主に皮膚の下にやわらかく膨らんだ塊ができます。
痛みや痒みはなく、初期にはシャンプーやブラッシングなどの際にたまたま見つけることがほとんどです。時間がたつにつれてゆっくりと大きなふくらみになっていきます。
治療:
外科手術で腫瘍を取り除きます。
基本的には良性のものですので、小さいものですとそのまま様子を見ることもありますが、大きくなってくるようでしたら早めに取り除いてあげたほうがよいでしょう。
また、腫瘍組織が皮膚の下だけでなく筋肉にもめり込んでしまっているもの(浸潤性脂肪腫)では手術後にもしばしば再発することがあります。
※脂肪肉腫は悪性のものですが、転移はきわめて少なく、手術で取り除いた後はほとんど再発は見られません。
肥満細胞腫は見た目は非常に脂肪腫に似ていますが、外科手術後に放射線療法や抗がん剤療法などを併用することもあります。この腫瘍細胞は刺激を受けると”ヒスタミン”という物質を放出して嘔吐、炎症などの症状を引き起こしますので、あまり触ったりもんだりしないほうがよいでしょう。
この病気は老齢のワンちゃんで非常に多い心臓の病気です。
特に大型犬に比べ小型犬のワンちゃんで発生します。
また、キングチャールズ・スパニエルでは3~4才の比較的若い子にも多発します。
心臓は常に収縮・拡張を繰り返し、体中に血液を送るポンプの役割をしています。
心臓は右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれていて、各部屋を血液が正しい方向に流れて行かなければなりません。各部屋の間には”弁”があり、各部屋ごとに血液を迎え入れ、送り出すときに逆流させないために開いたり閉じたりを繰り返しています。
”僧房弁”は左心室と左心房の間にある弁の名前です。この弁がしっかりと閉じないで隙間ができてしまった状態が『僧房弁閉鎖不全症』です。
症状:
最初はほぼ無症状ですが、次第に疲れやすく散歩を前ほど喜ばないなどの症状が出始めます。
病気の進行に伴い血液循環が悪化し肺水腫(肺に水がたまった状態)を併発します。このころではゴホゴホという咳や呼吸困難によるチアノーゼ(舌などの粘膜色が紫色になる)もみられます。
さらに進行すると運動をするとすぐに休もうとしたり、突然倒れたりしてしまいます。
診断:
聴診(心臓内の血液の逆流音、弁の閉鎖音の異常) レントゲン(心肥大・肺水腫の確認) エコー(心臓内の血液の流れ、弁の状態、心肥大の確認)
治療:
症状を緩和するために内服薬(血管を拡張する薬や心臓の収縮力を高める薬など)を処方いたします。これらの薬は心臓のポンプの役割を助けるためのものですので、突然飲むのを止めてしまうと急速に薬でカバーしていた分の負荷がかかり、病気が悪化してしまう可能性があります。調子が良くなった場合でもしっかりと飲ませてあげて下さい。
また、咳があったり肺水腫の併発が見られる場合には利尿剤も処方します。
残念ながら一度この病気を完治させる治療法はありません。
しかし、適切に治療をしていけば病気の進行をなるべく遅らせたり、日常生活を楽に過ごせるようにすることが出来ます。
年齢が高いワンちゃんでは特にお家での様子の観察・病院での定期検診を行って、病気の早期発見・QOL(生活の質)の維持に努めましょう。
文章担当:獣医師 水出
この腫瘍はワンちゃんの肛門の周囲にできる腫瘍です。
プレシニア期以上の去勢していないオスの子に多くみられます。
症状:
主に肛門周囲にしこりができます。初めは小さいのですが徐々に大きくなり、やがて潰瘍化したり、うんちが出にくくなったりします。
また座ったりした時には地面とこすれ、出血を繰り返します。
この際には、かなり激しく出血したり、なかなか止まりにくかったりすることもあります。
場所的に汚れやすいため、細菌感染にも注意が必要です。
この腫瘍は良性のものですが、非常に似たものには肛門周囲腺癌などの悪性のもののあります。
この判別診断には、病理検査(細胞の形を調べる)を行います。
治療:
基本的な治療は外科手術で取り除く事となります。
サイズの大きいものでは肛門括約筋などの組織も取らなくてはならない場合もあります。
肛門括約筋は排便のコントロールに重要な筋肉ですので、これを除去した場合には術後に排便を我慢しにくいなどの問題が生じる事もあります。
この腫瘍の発生には性ホルモンが関連しております。この為、同時に去勢手術も行い新たな腫瘍の発生を防止します。
予防:
去勢手術によりこの腫瘍の発生はかなり低くなります。
文章担当: 獣医師 水出
*子宮蓄膿症とは?
5歳以上の中高齢のワンちゃんになりやすく、まれにネコちゃんにもなることがあります。
もともと無菌状態の子宮の中に大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラなどの細菌が侵入し
内部に膿がたまってしまう病気です。
この病気は、避妊手術(子宮卵巣摘出術)で100%予防ができます。
*なぜ子宮蓄膿症になるの?
発情後の免疫力低下、卵巣の分泌ホルモンバランスがとれていない時に
子宮内に細菌が侵入し増殖します。
5歳以上の中高齢期になると免疫力・体力・活力が低下します。
本来なら内部に入る精子をとどめ、受精卵の着床を助ける為に子宮頸管が
閉じられているため、細菌と膿を体外に排出できず、子宮内での
炎症・化膿をひどくしていきます。
*なりやすい時期
発情から2~3ヶ月後に発症することが多いです。
交配させた場合・・・陰部を気にして舐めていたり、お腹が膨らんでくるため
妊娠と間違えてしまうことがあるので注意してください。
*どんな症状?
はじめは無症状です。
その後、元気食欲がなくなり、嘔吐、多飲多尿といった症状が見られます。
陰部より膿が排出する場合もあります。
そのまま放置をしてしまったり、子宮が破れて腹腔に細菌が漏れてしまった場合は
症状が悪化し大腸菌などの細菌が出すたくさんの毒素が体内にまわって
腹膜炎や腎炎、肺水腫、さらに腎不全などの多臓器不全で命を落としかねません。
*診断方法は?
血液検査、エコー、レントゲンです。
*治療方法は?
・最善の治療法は、手術で膿のたまった子宮と卵巣を取りだし、腹腔内を洗浄します。
手術が早い段階で行われればほとんどの場合は回復に向かいます。
ただし、症状が進むにつれ、死亡率が高くなります。
<手術をしない場合>
・抗生物質と子宮頸管を開く注射で膿を排出させる方法もありますが、
再発してしまう確率が高まるので当院ではお勧めしていません。
<鍼灸治療>
当院では麻酔のリスクに耐えられない開放性子宮蓄膿症のワンちゃんにおいて
これらの症状が見られましたら、すぐにご連絡下さい。
担当 看護士横田
血管肉腫は極めて転移速度が速く、悪性度の高い腫瘍です。
8~10才のオスのワンちゃんに多く見られ、中でもジャーマンシェパードとゴールデンレトリバーで発生率が高いとされています。
この腫瘍のうち50%が脾臓、25%が心臓(右心房)、13%が皮下組織で発生しております。
その他にも肝臓、膀胱、骨、舌など、様々な部分での発生が報告されています。
症状:
腫瘍化したのがどこの部分かによって現れる症状は異なります。
多くの場合は腫瘍が破裂したことによるショック(急性の虚脱)、腹部の腫れ(腹腔内血液貯留)で病気が見つかります。
また、不整脈も認められることがあります。
検査:
エコーやレントゲンで腫瘍の有無を確認すると同時に、血液検査で貧血や止血異常などを確認します。
確定診断は腫瘍組織の細胞を観察する“病理検査”になります。
治療:
外科手術をおこない、腫瘍を摘出することが必要となります。
残念ながら手術が成功したとしても数か月しか生きられないとされています。
しかし、病気の発見時には腫瘍が破裂しているか、破裂のリスクが高い状態であることがほとんどですので、手術をしないでいるとすぐにでも亡くなってしまうことが予測されます。
治療法として外科手術だけを行った場合、術後の生存期間はおよそ20~60日(1年以上は10%以下)とされていますが、術後に抗がん剤を使用した場合、生存期間はおよそ140~202日(1年以上は30%)と延長させることができます。
どのような病気でもいえることですが、どのような形の治療を選択されたとしても最後まで迷われたり悩まれたりされることでしょう。
また、この病気のように進行が速く、命にかかわる病気ではますます心細くお感じになられることと思います。
ご不安やご質問がおありでしたら、何でもおっしゃってください。
その子にとって、また、その子の飼い主様にとって、どのような形が一番良いのか、QOL(生活・生命の質)を守るために何ができるのか、私たちスタッフも精一杯考え、努力していきたいと思います。
担当 : 獣医師 水出