知多半島道路に豚??
これは丁度一ヶ月程前に、愛知県の開業部会主催のセミナーに行った時の話です。
セミナーは1時からだったのですが、子供をサッカーの試合会場に送ってったりしているうちに、あっという間に電車の時間が過ぎてしまい…「名古屋までタクシーで行くのは贅沢かしら…」とも思ったのですが、以前から受けたかった兎の第一人者である斉藤久美子先生のセミナーでしたので、私としては、かなり奮発して行ってきました。(名古屋に疎いワタクシですが、電車に乗り遅れた時は、次からは駐車場を探して、車で行こう!と心に決めました。それよりも遅れない様にする事が先決だたりして(^_^;)…。)
住吉町の駅からタクシーを拾い、運転手さんに事情をお話して、急いでセミナー会場に向かって頂いたのですが、知多半島道路を過ぎた所で、交通渋滞に巻き込まれてしまいました。
「きゃ~、困ったな~…、折角タクシーに乗ったのに、遅刻しちゃうのかしらん…。」と憂鬱な気持ちを抱えたまま、何やら男の人が三人ほど路肩に座り込んでいたので、覗いてみましたら…な、な、なんと~~大きな豚が横たわっていて、その豚を交通警備隊の服を着た三人の男性が押さえつけているではありませんか!
そうなのです。
どこかで、育った豚が、出荷される途中で、身の危険を感じて?名古屋高速に入るちょっと手前で豚走ならぬ、逃走したのでアリマス!
それを見て、大学時代のある日を思い出しました。
大学五年生の時に、研究室の講師が心臓の研究をなさっていたので、生まれて初めて屠殺所(とさつじょ)へ豚と牛の心臓を頂きに、アイスボックス片手に行った時の事です。
兎に角初めての経験でしたので、白衣を着て、入り口で車と靴を消毒した後、うろうろしておりましたら、丁度豚がトラックごと運ばれてきました。
そのトラックを屠殺所の入り口に後ろ向きにつけると、そこからはベルトコンベアーの様になっており、トラックの荷台のドアを外すと同時にその入り口から豚がベルトコンベアーの床に乗せられ、屠殺される所へ自動的に運ばれる様になっていたのです。
その時「ぶひ~っ、ぶひ~ぃ・・!!!」と豚が一斉に鳴きました。あたかも「嫌だ!まだ死にたくないよ~!!」と言っているようでした。
不思議な事に、“動物の勘”なのか、彼ら(彼女ら)も初めてそこへ行くのでしょうに、もうここに着いたら二度と生きて帰る事は出来ないと察しているように見えました。
そう、同じ日に見た牛も馬も・・・屠殺される所まで引っ張られるのですが、それを察しているのか、かなり抵抗していました。
あれからもう二十年以上経っていますが(おっと、年がばれてしまいますね!)今でもその光景は忘れられません。
開業して何年か経った時、一時お肉が食べられなくなった事がありました。
「飼い主さんになつく犬や猫と家畜は愛情を掛けるか掛けないかの違いだけで、家畜だっていつも話しかけて可愛がったら、きっと犬猫並みになつくんじゃないかしら…。何の違いもないじゃない・・。」と思うと何だか、家畜達に申し訳ないような気がしてきたのです。
“精神レベル”と言う言葉を使った場合、確かに犬と猫はかなり私達の言葉を理解していて人間に近いように思いますが、他の動物(例えばハムスターでもセキセイインコでも兎でも)は感情が犬猫に比べて乏しいかと言ったら全然そうじゃないんですよね…。
そんなに変わらないのではないかと思ったりします。
嫌いな動物や人と同居したら、それだけで、具合が悪くなることがあるし、飼い主さんが忙しくてかまってくれないとやはり元気がなくなってきたりします。
イライラして自虐行為(自分で自分の羽や毛を抜いたりする行為)をしたりします。そして、焼もちを焼いたりもします。
そうやって考えると、「家畜も私が診ている動物と変わらないな~!」と思えてきて、二年程、家族で外食しても肉は口に出来ませんでした。
でも、こういう私もお肉を食べて育ちましたし、子供達は今育ち盛りなので、やはり食卓には魚よりも肉が乗っていることが多いです。
そして、今は私もお肉を頂いています。
あれから数日して、、食事時にこの豚さんの話を子供達にしました。
「私達はこうして命を頂いているのだから、大事に、感謝して頂こうね!」と。
反抗期バリバリの息子達にどれだけ私の気持ちが伝わったか解りませんが、彼らなりに感じていることだと思います。
あの豚さん…みんなに取り押さえられて、その後やはりお肉になったのでしょうね…。
最後に…こうして書くと、何だかお肉を頂くことが悪い事の様に聞こえそうですが、そういうつもりで書いたのではありません。
先日、牛の生産者の奥さんが猫を連れてみえた時に彼女が、「私は、肉牛には、あんた達は美味しい肉に育ってってね!って声を掛けるし、乳牛には、お乳を沢山出してくれてありがとね!って声を掛けて、搾乳の度に頭を撫でるの。そうすると牛も落ち着くのよ!」と言っておられました。
私達はこうして命を頂いて、育っているのですね…。
お肉だけではなく、私達がこうして動物病院で使っている薬も、飲んでいる薬も、そして、化粧品も…、み~んな動物達のお陰で使うことが出来ているんですよね。
だから、私達は決して、動物より偉い訳でもないし、そういう事に感謝しながら、お肉を頂いたり、薬を使ったりしていきたいと思いました。