飼い主さんから学ぶことⅠ
最近「師走のせい」ばかりではなく、日本中が慌しく、私などもいつも何かに追われてせっつかれているような思いで毎日生活しているところがあります。
それはきっと、飼い主さんたちも同じことだと思います。
当院に来院される方の多くは女性であり、仕事、家事、子育てなどの合間に来てくださいます。
そして少数の男性は御自分の仕事が終わり次第、急いで車を走らせて来てくださいます。
その様にお忙しい中で、来院してくださる飼い主さんには本当に頭が下がる思いで診察させていただいています。
先日、ある壮年の男性(Hさんと呼ばせて頂きます。)に「お忙しいところ大変でしょうが、また、いついつに点滴に来ていただけますか?」
とお伝えしたところ、「いいえ、大変は大変ですが、大切な子ですから・・・。私たちはこの子達にいつも癒されているんです。なので、この子達にその恩返しのつもりで、出来る限りのことをしたいんです。」と仰いました。
その方は三月から当院に来て下さっているのですが、15年以上前から猫ちゃんをずっと飼ってらして、多いときには6匹、現在は2匹飼っていらっしゃいます。
今までの猫ちゃん達との暮らしの中で、この一年ちょっとのうちに、2匹腎不全の末期(高齢の猫の死亡率のトップだと思われます。)で亡くされて、とても悲しい御経験をされていました。
それで、今診せていただいている子は、16才の雌猫なのですが、6月のある日、「前の猫達の様に、手遅れにならないうちに、血液検査をして欲しい。」と、無症状の時に突然来院されました。
その時に、慢性腎不全の中期(Ⅰ期~Ⅳ期のうちのⅡ期)である事がわかり、飲み薬とともに週2~3回点滴する為に通院して頂いて、今、その子は症状の発現もなく、良い状態でいてくれています。
その事をきっかけにして、今行っている「年に一回(4~7月)の犬の血液検査」だけではなく、「猫も6才を過ぎたら半年~一年に1回の血液検査を飼い主さんに推奨しよう!」という事になりました。
私たちの病院では、「その子に一番良いと思われる事をさせて頂こう!」というのが、一つのスローガンでありますが、やはり、人間の様に保険制度が徹底している訳ではない為、なるべく不要な検査をしない様に気をつけているつもりでも、どうしても検査をしなくてはならない場面が出てくる事があります。
その度に、飼い主さんとは、お話をさせて頂いておりますが、それでも治療させて頂く私たち獣医と飼い主さんとの間に多少のずれが生じる事が、たまにあります。
3年前から推奨しております「猫のフィラリア症予防」にしても、そして今回の高齢猫の血液検査にしても、“過剰診療ではないか?”と思われるのが、正直少し怖いところもありましたが、今回のHさんの一件で、大切になさっている動物達に良いと思われることは、それが検査であっても、やはり自信を持ってお勧めするべきだと確信する事が出来ました。
この様に、また立ち止まって原点に帰るきっかけを下さった Hさんにとても感謝しています。