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犬・猫・ペットの治療と予防│リリー動物病院

わんちゃんの糖尿病

わんちゃんにも糖尿病があることをご存知ですか?

今回はわんちゃんの糖尿病について症状や予防法など詳しくご紹介いたします。

 

糖尿病はどんな病気?

犬の糖尿病も人間と同じようにホルモンの一種「インスリン」の働きが悪くなることで、血液中の糖が多くなってしまう病気です。インスリンは膵臓(すいぞう)という臓器から分泌されて、血液中の糖を細胞内に取り入れ るという働きを持っています。このインスリンの働きが弱まってしまうと、細胞の中に入っていくはずの糖が血液中に残ったままになり、血液中の糖濃度が高くなってしまいます。この状態を高血糖といい、この状態が長期 的に続くと体の様々な場所に障害を引き起こします。 犬の糖尿病の発生率はだいたい200頭に1頭の割合で、メスの方がオスより約2倍も多く発症すると言われています。

糖尿病の症状

犬の糖尿病は、症状の度合いによって大きく3つに分けられます。

1.合併症のない糖尿病

普段は比較的元気ですが、病理学的に明らかに糖尿病があると認められる状態を言います。

・多飲・多尿になる

・おなかが膨れる(体全体が太っているというよりお腹だけ膨らんでいる)

・沢山食べるが、痩せていく  いつもより食べる量が増える日が続いたと感じたら要注意です。

糖尿病=肥満のイメージがありますが、沢山食べていても痩せてしまうのが特徴です。

2.合併症のある糖尿病

糖尿病の合併症では白内障や再発性皮膚炎・膀胱炎・膵炎などが多く、メスの場合は子宮蓄膿症になってしまうケースもあります。症状が悪化した場合「ケトアシドージス性糖尿病」という状態になります。これは通常の糖 尿病の他に、下痢や嘔吐の症状を伴います。ケトアシドージス性の糖尿病では、尿に「ケトン体」と呼ばれる化学物質がみられます。このケトン体が体内に蓄積されていくと、症状が悪化します。また運動失調や虚脱といっ た神経症状の他、心筋梗塞や腎疾患・肝疾患が引き起こされる可能性があります。

3.昏睡のある糖尿病

さらに重症化するとほとんど眠った状態になります。犬の糖尿病では昏睡は稀にしかみられない症状のようですが、ここまで重症化すると死に至ることもあります。

原因

1.先天的な要因

犬の遺伝子疾患データベースによると、以下の犬種が遺伝的な原因で糖尿病になりやすいと発表されています。

・ダックスフント

・プードル

・ミニチュアシュナウザー

・ビーグル ・テリア

・ゴールデンレトリバー

・ラブラドールレトリバー

 

2.後天的な要因

早食いやドカ食いが習慣化していると、食事のたびに大量のインスリンが放出されるようになり、細胞のインスリンに対する反応が鈍くなり、血糖を取り込む作用が徐々に鈍ってきます。そうすると血中の糖濃度が高いまま となり、それが続いた結果、最終的に糖尿病を発病することになります。 人間も健康のために「よく噛んで食べましょう」と言われますが、それは犬の健康維持にとっても大切なことだと言えるでしょう。犬が早食いしないよう工夫されたエサ皿も販売されていますので、それらを利用するのもいいですね。また、食べすぎや運動不足による肥満も糖尿病を発病しやすくなるので注意が必要です。可愛さについおやつを与えてしまいますが、与えすぎには注意し栄養管理をしてあげることが大切です。

早食い防止用エサ皿↓

 

治療法

血糖値のコントロールが治療の主体となります。軽度の場合は食事療法や運動療法でコントロールを行いますが、わんちゃんの糖尿病では多くの場合、インスリンの投与が必要になります。それでは具体的にそれぞれの治療法をご説明します

1. 食事療法

食事量が多すぎると、血中に放出される糖分も増えますので、食事の質と量には十分な配慮が必要です。 獣医さんとよく相談の上、運動量とあわせて毎日の摂取カロリー数、給餌回数、タイミングなどを設定します。 食事で特に大事なことは、いつも一定のカロリーの食事を与えることです。 内容的には、炭水化物(糖分)を控えめにし、食物繊維を多くして良質のタンパク質に富んだ食事にします。 また、最近は療法食として、糖尿病の犬や猫向けに、栄養やカロリーが計算された療法食のドッグフードも市販されるようになっています。 糖尿病向けの療法食の特徴としては、糖としての吸収速度が遅い大麦などを使用していたり、食物繊維やタンパク質を豊富に含んでいるのにカロリーは控えめになっているような工夫がされています。 獣医の指示により、決まった食事や量を与えるようにしましょう。

2. 運動療法

糖尿病の食事療法とともに取り入れられるのが運動療法です。運動によって、体内についている余分な脂肪を減らしたり、多すぎる血糖を消費する事を目的としています。ただ、インスリン注射をしている場合は、その日の運動量によって注射の量が変動しますので、獣医とよく相談したうえで運動内容を決めるようにしましょう。

3.インスリン療法

インスリン投与での治療では、獣医から指導を受けた飼い主さんが、毎日決まった時間にわんちゃんにインスリン注射を行うことになります。現在わんちゃんに利用できるインスリンは数種類あり、種類によって「最もよく効果が現れるまでの時間」や「効果が持続する時間」が異なります。また、体格や食事量、食事の種類、食べ方、運動量など様々な要因によっ てインスリンの種類や必要量が変わってきます。そのため、何回か検査入院し最も合ったインスリンの種類、投与量、投与間隔を調べます。具体的にはインスリンを皮下注射した後、数時間おいて血糖値を測定し血糖曲線(血糖 値の変動をグラフにしたもの)を作成します。その結果をもとに最も適正な血糖値が維持できるインスリンの種類、投与量、投与間隔を決定します。インスリンの注射量はその日の運動量や摂取カロリーによって左右されますので、獣医師さんと相談した上で、適正な量を注射するようにしましょう。

予防法

脂肪や炭水化物などが多い偏った食事は肥満を起こしやすく、急激に血糖値が上がることは糖尿病を発症しやすくなります。ワンちゃんの年齢や状態に合わせて適切に食事を与えるようにしましょう。 また、お散歩などの運動管理もきちんと行いましょう。 女の子のワンちゃんでは、避妊手術をすることで糖尿病の発症を低下させることができるといわれていますが、避妊手術後は、肥満になりやすい傾向にあるので、体重管理には注意をしましょう。 予防のためには、血液検査や尿検査など定期的な検診を行うことが大切です。ご自宅では、ワンちゃんの飲水量や尿量、体重のチェックをこまめに行いましょう。また、多飲多尿や、たくさん食べるが痩せているなどの症状 がみられた場合は、早めに動物病院にご相談ください。

最後に

犬の糖尿病は生涯付き合っていく病気です。様々な合併症や免疫の低下など危険性もありますが、インスリン治療がうまくいけばわんちゃんや飼い主さんにとっても良い時間も持てます。普段から予防法を心がけることが大 切ですが、万が一糖尿病になってしまったら、小さな不安もその都度相談し治療を含めた生活のペースを作っていきましょう。

 

2021年 1月 03日掲載
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