災害に備えて(その3)
みなさんは、ワンちゃん・ネコちゃんの災害時の備えは万全ですか?
今回は災害にあった際、避難所などに入る事を想定し、できた方がいいことの一つ、『ワンちゃんの基礎訓練(「お座り」「伏せ」「待て」など)ができている』ことについて詳しくお話しさせていただきますね。
★飼い主さんとの信頼関係ができており、飼い主さんの指示を聞くことにより、精神的に安定するため、慣れない環境化でもパニックになりにくくなります。
★避難所などの集団生活でも行儀よく、周りの方に迷惑をかけることなく生活できます。
野生のワンちゃんは群れの中で暮らします。
そして、群れの中にはリーダーが存在しており、リーダーが他のワンちゃん達に「何をすべきか」を示します。
人と暮らすワンちゃんも同じです。
ワンちゃんはリーダーからの指示がないと混乱してしまいます。
ワンちゃんが人と幸せに暮らすには、人がリーダーとなり、ワンちゃんに「何をすべきか」を示すことが必要です。その第一歩が基礎訓練なのです。
ワンちゃんに飼い主さんがリーダーなのだと認識し、信頼してもらわなければなりません。その条件として…
- 1 しつけ(基礎訓練を含む)をしている
- →指示通りうまく出来た時に、ワンちゃんに自信がつきます。また、うまく出来た時に褒めてくれる飼い主さんを頼もしく感じます。
- 2 態度が一貫している(飼い主さん自身の決めたルールを曲げない)
- →その時の気分で叱ったり褒めたりしないようにしましょう。
- 3 一緒にいるとワンちゃんが楽しいことがある・嬉しいことがある
- →散歩に連れ出してあげる、一緒に遊んであげる、いっぱい触ってあげるなどしましょう。
- 4 常に主導権を握る(ワンちゃんの思い通りに動かない)
- →ワンちゃんが吠えたりひっかいたりしてねだってきた直後におやつをあげたり、遊んだりしない。引っ張る方向に散歩しないなどです。
※おねだりに応える時は、何か指示(「お座り」「伏せ」「待て」など)を出し、それに従ってからにしましょう。
★褒める時・叱る時
●ワンちゃんは、よく言葉ではなく、声のトーンで「叱られているか」、「褒められているか」を判断します。
低く落ち着いた声=リーダー犬の命令・いかくの声
高い声=仔犬の遊びたい声
に聞こえるそうです。
→ワンちゃんが勘違いしないように、指示をする時・叱る時は低く落ち着いた声で、褒める時は高い声で言ってあげましょう。
●ワンちゃんも叱られることは悲しいし、褒められると嬉しいものです。
→叱る時は短く、褒める時は長めにおおげさにしてあげましょう。
●ワンちゃんが悪い事をしても、少し経ってから、叱ってもなぜ叱られているのか分かりません。
→悪い事をしている最中もしくは直後でなければ、叱るのはやめましょう。
●叱る前に「名前を呼ぶ」「呼んで飼い主さんの所にこさせる」ことはしないようにします。
→これらをして叱ると、ワンちゃんは「名前を呼ばれた後に叱られる」「呼ばれて行くと叱られる」と覚えてしまいます。
★同じ指示(「お座り」、「伏せ」など)を繰り返さない
指示を覚え始めた際、指示を出してもすぐ従ってくれない時は、つい何度も繰り返して言いたくなりますが、それはしない方がよいでしょう。
目を合わせてから指示を出しているのであれば、ワンちゃんは指示を理解していない訳ではなく、「やらずにすまそう」としているかもしれないからです。一度の指示で従わない癖をつけてしまうと、のちに指示を出しても、まったく従ってくれなくなる可能性があります。
少し待ち、従う気配が見受けられなければ、リードを引いたり、ワンちゃんの体を押したりして、目的の指示ができるようにしましょう。
それでもできない場合は、一度歩かせるなど他のことをしてリセットし、改めて指示を出し従ってもらうようにしてください。
★訓練は短い時間で楽しんで、何回も繰り返す
ワンちゃんが飽きてしまっては、訓練は進められません。
飼い主さんがイライラしてしまっても、訓練は上手くいきません。
→5~10分くらいの時間でワンちゃんも飼い主さんも楽しみながら、何回も繰り返し訓練しましょう。あきる少し前にやめることが、楽しく続けるコツです。
★ご褒美のおやつ
指の先くらいの大きさのおやつを準備してください。
→今後、訓練で与えることになります。ワンちゃんが味を感じて一口で食べてしまえる大きさにしましょう。「一瞬味がした」くらいのほうが指示と関連付けてワンちゃんは覚えてくれます。
おやつの持ち方は図を参考にしてください。
この指示をワンちゃんが出来るようになると訓練がスムーズに進みます。
ワンちゃんが鳴いて落ち着きがないようであれば、「静かに」と指示し鳴き止むようにしましょう。
ただし、ワンちゃんが嫌なことをすると攻撃的になる性格の場合は、この指示を覚えてもらう際に飼い主さんが咬まれてしまう可能性があります。
無理はせず、ワンちゃんが怒ってしまうようであれば、次の「見て」の指示に進んで下さい。
1 左手でリードをグッ引き、ワンちゃんを引き寄せ、右手でワンちゃんの口をがっちりつかむ。
2 ジッと目を見て、「静かに」と言う。
3 手を離してワンちゃんが静かになったら褒める。
4 また鳴き始めたら、繰り返しおこない、「静かに」と言えば鳴き止むようにする。
目を合わせて、ワンちゃんが指示を聞けるようにしましょう。
「見て」を覚え、一度目を合わせることができるようになったら、次の指示が出せる状態になります。
1 左手でリードをつかみ、右手でおやつを持つ。
2 ワンちゃんの名前を呼び、右手に持ったおやつを飼い主さんの鼻に近づけ、「見て」と言って、目を合わせる。
3 ワンちゃんが目を合わせ、関心が周囲のものから完全に飼い主さんに移っているようであれば、初めてすかさず褒め、おやつを与える。
4 「見て」と言って、先におやつを見せなくても、すぐに関心が飼い主さんで目が合うようになるまで繰り返す。(うまくできたら、その度にたくさん褒めて、おやつを与える)
1 左手でリードをつかみ、右手でおやつを持つ。
2 ワンちゃんが立っている時に「見て」と言い、目を合わせる。
3 右手に持っているおやつをワンちゃんの鼻先よりやや上に持ってくる。(鼻から離れるとワンちゃんがジャンプして取ろうとするため、鼻先ギリギリで、顔が上向きになるようにやや上におやつを持っていく。)
4 ワンちゃんの興味がおやつになったら、「お座り」と言って、ワンちゃんのお尻を軽く床に向けて押す。
5 ワンちゃんがうまく座れたら、すかさず褒め、おやつを与える。
6 「見て」から「お座り」がおやつを先に見せなくても、スムーズにできるまで繰り返す。(うまくできたら、その度にたくさん褒めて、おやつを与える)
1 左手でリードをつかみ、右手でおやつを持つ。
2 ワンちゃんに「見て」と言い、目を合わせる。
3 ワンちゃんが立っているか伏せているようであれば「お座り」をさせる。
4 ワンちゃんが座っている状態になったら、右手のおやつを鼻先に持っていき、興味がおやつになったら、「伏せ」と言い、おやつを少しずつ前足の間を真下に下げる。
床に着きそうになったら、床に水平にワンちゃんとは反対側へ動かす。(その際、ワンちゃんがおやつに合わせて動くようにゆっくり動かす。)
5 ワンちゃんがおやつにつられて床に伏せ、お腹が床に着いたら、すかさず褒め、おやつを与える。
6 「見て」から「伏せ」がおやつを先に見せなくても、スムーズにできるまで繰り返す。(うまくできたら、その度にたくさん褒めて、おやつを与える、)
1 「お座り」か「伏せ」の状態から、「待て」と言って右手の平をワンちゃんの鼻先にかざす。
2 リードを持ったまま、ワンちゃんから一歩離れる。(この際、ワンちゃんが動いてしまったら、手で体を支えてからもう一度「待て」の指示を出す。)
3 3秒数えても静かに動かず待つことができたら、たくさん褒めて、おやつを与える。
4 一歩離れて3秒待つことができるようになったら、だんだん時間を長くして待てるようにする。(うまくできたら、その度にたくさん褒めて、おやつを与える)
5 長い時間待てるようになったら、待つ時間は3秒だか、ワンちゃんからより遠くへ離れていき、リードの長さギリギリまで離れても待てるようにする。(うまくできたら、その度にたくさん褒めて、おやつを与える)
6 リードの長さギリギリまで離れても待てるようになったら、プラス時間も長くして待てるようにする(うまくできたら、その度にたくさん褒めて、おやつを与える)
7 リードの長さギリギリにした状態で長い時間待てるようになったら、部屋の中で「待て」の指示を出し、リードを離してドアを開けるなど部屋から出るそぶりをしても待てるようにする。(うまくできたら、その度にたくさん褒めて、おやつを与える)
8 部屋を出るそぶりをしても、待てるようになったら、部屋の中で「待て」の指示を出し一瞬出ても待てるようにする。(うまくできたら、その度にたくさん褒めて、おやつを与える)
9 部屋から一瞬出ても待てるようになったら、だんだん時間を長くしても待てるようにする。(うまくできたら、その度にたくさん褒めて、おやつを与える)
ご褒美のおやつについて
おやつがもらえる事は、ワンちゃんにとって嬉しい事です。
最初は指示したことに従ってくれたら、褒めるとともに与えるようにし、訓練すると嬉しい事があることを覚えてもらいましょう。
訓練が進むにつれて、ワンちゃん自身が指示に従い、飼い主さんに褒めてもらうことに喜びを感じるようになります。(目が合うだけでもご褒美になるくらいです。)
慣れてきたら、おやつがなくても指示が従えるように訓練していきましょう。(10回に1回のペースでおやつを使わず指示を出し、出来るようになったら9回に1回、8回に1回…とおやつを与える回数を減らしていきましょう。)
ワンちゃんもネコちゃんも、一度基礎訓練の内容ができるようになっても、その後も訓練を続けないと、訓練前に戻ってしまうことがあります。継続して訓練する事が大切です。
今回はここまでです。
・呼べばすぐ来る
・ケージやキャリーなどで落ち着いて過ごせる
については後日また「ちょっとしたお話」に載せさせていただきますね。
担当:動物看護師 柴田由起